Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第4話

あらすじ
国家の財政が破たんし、イベント会場は動員人数と企画力・宣伝力で競うようになった2100年。『イベントプランナー』と呼ばれる国家資格保持者が活躍していた。なかでも歌詠玄人は世界最高ランクのプランナーとして評判が高い。その息子である赤人が、和歌の浦の地に降り立った!? 一人と一匹が起こす波乱万丈のライトノベル!月1回で連載開始!

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施設の控え室では、紀三井寺小楽団のメンバー達が各々の楽器を持ち、椅子に座っている。三井も同じように座り、忙しなく時計とメンバーの顔を見ている。

 そんな三井に、楽団の指揮者、小木が話しかけてきた。

 

「代表、僕達はこれから何をすればいいんですか?」

「それが、私も聞かされてないんだよこれから音楽の練習をしてもらうから、呼んでくれって赤人君に言われて」

「赤人? 誰ですか?」

「いや、実は私もよくわからないんだ有名なイベントプランナーを呼んだはずなんだけど、何故か子供の赤人君が来てねでも、凄くやる気があって頼りになる感じだったから勢いでその、任せてるっていうか」

「代表大丈夫なんですか。詐欺かもしれませんよ」

「き、きっと違うよ! 多分おそらく彼は天才少年か何かで、イベントプランナーとしての経験も豊富……。なわけないよなぁ、どう見ても中学生くらいだもんなぁ」

「おーい、三井さーん、助っ人連れてきたよ」

「あ、赤人君! 遅いよ、何してたんだい?」

「ごめんごめん、ぺテロが道に迷っちゃってたからさ」

「ペテロ?」

「初めまシテ、三井サン。ワタシ、ペテロといいマス」

 

 ペテロと呼ばれた白人の青年はまるでバレエのように優雅なお辞儀をすると、柔らかく人懐っこそうな笑顔を浮かべた。よく目を見てみると、赤と青の澄んだオッドアイの瞳をしている。

 

「ああ、これはご丁寧にどうも」

 

 反射的にピシッとしたお辞儀をし、握手を交わす三井。

 

「とてもキレイなフォームですネ、ワタシにも後でそのオジギを教えてくだサイ」

「あはは、これは癖みたいなものなので教えるほどじゃありませんよ。そうそう、紹介が遅れました。私は三井と申します。後ろにいるのが」

「き、紀三井寺小楽団で指揮をやっている小木といいます! あのあの、ペテロさんってもしかしてあの指揮者の」

「ハイ、3-6BLEND(サーティシックスブレンド)で指揮をしていマス。小木さん、ワタシのことを知っていてくれテとても嬉しいデス」

「へぇ、さすが小木君は勉強熱心だね、私は知らないけど、どこかで演奏を聴いたことがあるのかい?」

「何言ってるんですか! 代表だってテレビで聞いたことあるはずですよ! オリンピックとか世界的なセレモニーでも演奏してる超一流どころか世界一位って言われてる楽団です!」

「え?! ほんとに? こここ、これは失礼しました、ペテロさん! でも、そんな有名な貴方がなぜウチの施設に」

「そりゃあ、俺が呼んだからだよ」

「わんわん!」

 

「赤人君が? もしかして、ペテロさんと知り合いか何かなの?」

「赤人サンは私と仲間達の恩人デス。彼のお蔭でワタシも音楽を続けるコトが出来テ、3-6BLENDも沢山のお仕事ヲもらえるようになりまシタ」

「み、三井さん三井さん。ペテロさんに恩人って言われてるって……。あの赤人って子どもは何者なんですか?」

「わ、私にも分からないよ私はただ、祖父から貰った名刺のプランナーに連絡をしただけなんだ。祖父が、困ったらこの人に連絡しろって名刺には歌詠って書いてあって……。有名な玄人さんだとばっかり」

「三井さん、その名刺って今持ってる?」

「ええと、確かあったあった。この鳥居のマークが描かれた名刺だよ」

「名前のところが日焼けして消えちゃってるね。だからクソ親父と勘違いしたのか。でもこれ、俺が三井さんのおじいちゃんにあげたやつだよ。新しいのあげるから、今度はちゃんと間違えないでね」

 

―― イベントプランナー

        歌詠赤人   ――

 

「……。祖父が言ってたのは、君のことだったのか」

「ああ。この鳥居のマークは俺がイベントプランナーを始めた頃に名刺に書いてたやつだ。間違いないよ。俺が駆け出しの頃、ちょっと落ち込むことがあった。そんな時に三井さんのおじいさんに励まされて……。それで自信がついてイベントプランナーを始めたんだよね」

 短い犬のショウが、心配そうに赤人のことを見た。この少年にも暗い過去があるらしかった。

 

「そうか……。祖父も赤人君にいろいろ教えてもらったんだね」

「うん……。さて。練習を始めようよ。三井さん」

「そうだね! とっても、私達は何をすればいいんだい?」

「三井さんはこの控室と、紀三井寺小楽団のみんなの練習時間の確保とタイムスケジュールの調整! あと、1か月後の9月2日から毎週、子どもサッカーの予選練習会入れておいたから。球技場の整備手配もよろしくね」

「了解! 任せておけ!」

「小楽団のみんなはこれから一か月間、毎日演奏の練習! 今日と、毎週火曜はペテロが教えに来るから頑張ってね。ペテロは、小楽団のみんなに『バーバ・ヤーガの小屋』を教えてあげて」

「OK。赤人。任せてくだサイ」

「あの、『バーバ・ヤーガの小屋』はムソルグスキーの曲ですよね? それなら僕達も演奏できます」

「小木サン、それはスバラシイです。では、初めからパートシャッフルの練習をしまショウ」

「パートシャッフル?」

「やってみればわかるよ。それじゃあ小木さん、ペテロは音楽のことになると鬼みたいに厳しいから、頑張ってね」

「え、赤人君、それ本当……?」

「小木サン! 皆サン! それでは練習を始めマス! まずはパートを区切ってそれぞれ30演奏づつ弾いてみまショウ! 軽く準備運動デス!」

「えええ! ペテロさん! いきなりそんな量は無理じゃ……」

「大丈夫デス! 皆サンが出来るまでワタシがお尻を叩いてあげマス! ペンペンデース!」

「わ、分かりましたから鞭を指揮棒みたいに持たないでください! 頑張りますから! 許してくださいペテロさぁぁぁぁぁん!」

「ミンナ頑張ろう! ワタシも頑張りマース!」

  スパァァァン!

球技場に鳴り響く鞭の音は、さながら拷問のようだったと後に人々は語った。

 

 

(次回、最終話)

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(前話)

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