Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第二話

『イベントプランナーは15歳!?』

あらすじ
国家の財政が破たんし、イベント会場は動員人数と企画力・宣伝力で競うようになった2100年。『イベントプランナー』と呼ばれる国家資格保持者が活躍していた。なかでも歌詠玄人は世界最高ランクのプランナーとして評判が高い。その息子である赤人が、和歌の浦の地に降り立った!? 一人と一匹が起こす波乱万丈のライトノベル!月1回で連載開始!

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 「そろそろ来る頃なんだけどなぁ。早く来ないかなぁ。もうすぐだよなあ」

紀三井寺公園の代表取締役、三井一郎はその大きな黒縁眼鏡をいじりながら忙しなく部屋の中を歩き回っていた。

 紀三井寺公園とは、陸上競技場や野外庭球場、テニス場など6つ以上の運動施設を備える巨大総合運動競技場である。「公園」と名前がついているが、その実態は有名歌手ライブや世界リーグ、国体を行う国内屈指の建物だった。しかし、今までは『イベントプランナー』を雇わなかった。今回はじめて『イベントプランナー』を頼み、世界に羽ばたこうとしている。


ピリリリリリ

「来たか!」

三井は鳴り響く電話に飛びつくと、一度大きく深呼吸をしてから受話器を取った。

 

「もしもし、三井だ」

「あの、受付です。代表取締に会いたいという方がいらっしゃったのですが」

「ふむその方の名前は?」

「はい。歌詠(うたよみ)様と仰るそうです」

「つ、つ、つ、ついに来てくれた! やったぞ! 悪戯じゃないだろうな! その人は本当に、歌詠と名乗ったんだな!」

「は、はい。確かに歌詠様と……」

「わかった! その方は私の大事な客人だ! 今すぐ部屋に通してくれ!」

「ですが、しかし……」

「しかしも茶菓子もない! 今すぐここへ通してくれ!」

「は、はい!」

 受付は慌てていたようだが、三井は電話を切ってソファに座り直した。

「ふぅ」

受話器を置き、三井は安堵のため息を漏らした。

「ついに、ついに、我が紀三井寺公園繁栄の夢が叶う時が来た。祖父からこの施設を継いだのはいいが、高ランクの『イベントプランナー』がいなければ今の時代は上にはいけない。この大きな施設をより発展させるために私たちは動かなければいけない。冒険のときがきたのだ……。歌詠様が来たのならば、もう安心だ! 祖父が泣いて喜ぶくらいの、日本一立派な施設になるぞ!」

 三井は飛び上がらんばかりによろこんだ。この和歌の浦という場所で、三井の念願は常にこの巨大競技場の名声をあげることだった。『イベントプランナー』を雇うために、三井は人生を賭していたのだ。

 扉がノックされた時も、三井はいつもの尊厳ある態度はできない。今まで30年間待ち続けていた瞬間だった。

「どうぞお入りください!」

 扉が開き、頭をさげながらも三井は期待のこもった声で言った。

「ようこそ起こしくださりました、世界最高ランクの『イベントプランナー』歌詠玄人さ」

「こんにちは! 歌詠赤人です。こっちはパートナーのショウ! これからよろしくな、三井さん!」

「わんわん!」

「……あなたが、歌詠玄人さん?」

「歌詠赤人です、あ・か・と! で、こっちは相棒のショウ!」

「わぉ~ん!」

「歌詠赤人君とショウ君?」

 年端もいかない少年と犬を前に、まるで操り糸が切れた人形のように三井はソファに崩れ落ちた。だが、それは無理もないことだった。30年間の念願を叶えるのが少年と犬だと、三井に信じられるわけがない。ソファに崩れ落ちて冷静になると、みしみしと心臓を傷めつけるような怒りがわいてきた。

「わ、私はこの施設を紀三井寺公園を繁栄させるために世界一のプランナーを呼んだのだ! わたしのすべてを、つぎ込んで……! なのに、なぜこんな子どもと犬が!」

 

「わかってるじゃないか、三井さん。アナタが呼んだのは正真正銘、世界一のプランナーだよ。一番稼いでるのはあのクソ親父だけどね」

「くぅうん」

「ははは、君は冗談が本当に上手いな。きっと大きくなったら有名なイベントプランナーになれる。さ、今日は許してあげるから、サボってないで早く学校に帰りなさい」

「学校なんて5年前に卒業してるよほら、そんなことより早く敵情視察に行こう」

「卒業? 君は今15才だろ?」

「ああ。だからアメリカの大学をもう卒業している。日本は飛び級がない遅れた国だけどね。『イベントプランナー』として大学の学位も取っているよ。さあ、敵情視察に行こう」

「て、敵情視察?」

「この紀三井寺公園を日本一の施設にするんだったら、まずは近場の敵を抑えないとね。俺が調べた感じだと、この辺で大きな力を持ってるのは……」

 地図を見始めた少年を、三井は呆気にとられて見ているしかなかった。

 

(次話)

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(前話)

Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第1話

 

 

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