Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第1話

『イベントプランナーは15歳!?』

あらすじ
 国家の財政が破たんし、イベント会場は動員人数と企画力・宣伝力で競うようになった2100年。『イベントプランナー』と呼ばれる国家資格保持者が活躍していた。なかでも歌詠玄人は世界最高ランクのプランナーとして評判が高い。その息子である赤人が、和歌の浦の地に降り立った!? 一人と一匹が起こす波乱万丈のライトノベル!月1回で連載開始!

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 2100年国の財政は乱れ、各都道府県への援助金が支払われなくなった時代。
 各都道府県、市町村の長達は知恵を出し合い、各々の持つ施設や観光地などを駆使して財政の工面を立てていた。その中で最も重要視されたのが『イベントプランナー』と呼ばれる指導者たちであった。

 「さぁ、今年もやってまいりました! 総入場者数100万人を誇るビッグイベント! その名も『コミックフェスティバル!』 現在、映像にてお届けしておりますのは会場となる東京ビッグサテライト正門です! まだイベント前日にも関わらず長蛇の列が出来ております!」

 TVのなかで、アナウンサーが興奮気味にコミックフェスティバルを映し出している。東京ビックサテライトの正門にできた長蛇の列は、みな嬉しそうな顔をしていた。

 「このイベントはかの有名なイベントプランナーが指導し……」
 「どうも、こんにちは」

 熱くイベントの実況をしている男性アナウンサーの言葉を遮るように、一人の男性が現れた。
 真っ黒なサングラスで瞳を隠し、高級なスーツに身を包んだ男性である。
 年は30代後半といったところだろうか。
 口角の上がり具合で笑顔を作っていると判断できるが、場の空気は和やかではない。
 まるで一国の王が現れたかのように、男性アナウンサーの頬を、緊張の汗が流れた。

 「う、歌詠(うたよみ)さん!?  なぜここに!?」
 「ははは、すいません。紹介いただける時間まで待てなくて、ちょっと早く出て来てしまいました」
 「さ、流石は世界最高と謳われる名イベントプランナー! 巧みなサプライズに私(わたくし)もまんまと驚かされてしまいました!
 それでは改めてご紹介いたしましょう。世界Sランクイベント『コミックフェスティバル』をはじめ、数々のビッグイベントを仕掛ける世界ランク一位のイベントプランナー、歌詠玄人(うたよみ・くろうど)さんです!」
 「ははは、私などまだまだ駆け出しのプランナーに過ぎませんがね」

 スタジオでは熱狂した女性ファンたちの黄色い歓声が飛び、イベントプランナー歌詠玄人は答えるように手を振った。この日本で――いや、この世界で歌詠玄人の名前を知らないものはいないのだ。
 しかし、そんな歌詠玄人を冷たい目で見ていた少年がいる。

 「ふん、何が駆け出しだよ。思ってもいないくせに」

 和歌山県和歌山市和歌浦にある玉津神社の片隅で、15歳の少年、赤人(あかと)は眉間にシワを寄せてつぶやいた。まるで積年の怨敵を見るかのように、その目はスマートフォン画面に映る男、歌詠玄人を睨みつけている。


 「絶対に今度こそ勝ってやる」

 

 赤人はスマートフォンをポケットにしまうと、拝殿に駆け寄り鈴を賑やかに鳴らした。お辞儀をしる姿勢は正しい。

 赤人とてちゃんと参拝の礼儀は知っている。だが、幼少の頃にやっていたこの動作の方が、神社の神に思い出して貰えると思ったのだ。この地で幼少を過ごし、出て行った自分のことを、もう一度玉津島神社の神様に思い出して貰わなければ。これから、この和歌の浦を復興させる身として。


 「ただいま。もう俺、逃げないからね」

 
 気のせいだったろうか。神社の鈴が一人でに、りん、と鳴った気がした。

 赤人は拝殿に向けてニッと笑うと、そのまま向きを変え、鳥居を潜り走り去る。

 すると、一匹の茶色いミニチュアダックスが赤人に飛びついてきた。礼儀正しく鳥井の前で待っていた赤人の相棒だ。脚は短いが、度胸はあり、頭のいい友達でもある。


 「わぅ~ん、わんわん!」

 「よしよし、ショウ。ちゃんと待っててくれたんだな、いい子だ。それじゃあ、一緒に行こうか」

 「わん!」

 


一人と一匹は、春の玉津島神社を駆けて行った。りん、りんと鈴が鳴る。彼らを応援するかのように。

 

Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第2話 

Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第3話 

Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第4話 

Kino-Kuni文學賞 特別連載ライトノベル第5話

 

応募フォーム

応募概要

審査員紹介